おりもの(膣炎)について   

 おりものが多く不快に感じる時は膣内に病原菌による感染が生じた場合がほとんどです。特に臭いが強い場合は感染の可能性が強くなります。


 感染の原因には、1)細菌・2)真菌(カビ)・3)原虫・4)クラミジア・5)マイコプラズマ・6)アメーバ類・7)ウィルス、8)トレポネーマ(梅毒)、などがあります。1)〜4)までは通常の検査で判明しますが、5)以下は特殊な検査でしかわかりません。
 

 正常の膣内にはデーデルライン菌という乳酸菌がいて膣の中を酸性に保ち病原菌の増殖を防いでいます。カンジダなど真菌(カビ)や多くの細菌は、弱酸性〜中性〜弱アルカリ性で増殖します。乳酸菌が減ると膣内の酸性度が低下します。乳酸菌が減る原因には、増殖性の強い病原菌の感染、抗生剤の服用、女性ホルモンの低下などがあります。
 

 膣内に病原菌が入る原因は性交渉や不衛生な場所での入浴などがほとんどです。膣周囲やペニス周囲には雑菌や肛門由来の大腸菌などが付着しているため性交渉前の双方の入浴やシャワーは不要な感染を予防します。病原菌は種類によっては膣炎のみならず子宮や卵管の炎症を起こすので膣炎の予防は重要です。
 

 膣内から病原菌がいなくなれば、正常の月経周期の婦人では乳酸菌は自然に膣内で増殖し、もとの状態に戻ります。詳しくは次ページ(おりもの・かゆみ)をどうぞ。

性感染症(症状の強さによる分類)

A:自覚症状の強いもの(痛みや痒みが強くすぐおかしいと気付く)
  ヘルペス外陰炎(激しい痛み・排尿時にしみる・混合感染では発熱も)
  淋菌感染(排尿痛・膿性のおりもの・下腹痛・発熱など)
  カンジダ膣外陰炎(はげしい痒みと粉チーズ様のおりもの)
  トリコモナス膣炎(はげしい痒みと乳白色のおりもの、など)
  アメーバ赤痢(下腹痛とおりもの)
  毛虱症(陰毛部分の皮膚の痒み)、

B:症状があまりなく腫瘤を自覚して気付くもの
  初期梅毒:性器に5mm〜1cmの硬結を生じ、その後中央部に潰瘍ができる。
  尖圭コンジローマ(HPV感染):膣や小陰唇に鶏冠のような乳頭状の硬い腫瘤ができる。

C:症状のないもの(感染に気付かないため放置される)
  AIDS、子宮癌ウィルス(HPV感染)、クラミジア、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルスなど
                             

性器クラミジア感染症

 クラミジア(クラミジア・トラコマティス)感染は、世界中で急増し感染報告が最も多い性感染症です。感染すると男性は尿道炎、女性は子宮頸管炎、子宮付属器炎、骨盤腹膜炎などを起こします。特に女性の場合は卵管が障害され不妊症や子宮該妊娠の原因となります。

若年女性に広がりを見せるクラミジア感染

 2001年の発表では若年女性の感染者は、20歳未満の女性が全体の約10%、25歳未満では全体の30%と大きな割合を占めています。クラミジア感染のほとんどが性行為が原因です。このように若年層に広がった原因としては、1)クラミジアの潜伏期が1〜2週間と長くその間に感染を広げる、2)感染しても自覚症状が少なく気付かれない、3)性交経験年令が低年令化した、4)性病に対する認識が薄い(性教育の不足)、など考えられています。

 クラミジアに感染すると感染初期は症状が軽く、特に女性では上の「性行為感染症の一覧」に示したように自覚症状が乏しいのが特徴です。そのため感染に気付かず放置され、その結果感染を広げているのが現状です。米国では「子宮頚管にクラミジア感染があり頚管炎を起こしているとAIDS(エイズ)などのウイルスにより感染しやすくなる」と警告しています。

不妊症・子宮外妊娠や流産の原因

 女性がクラミジアに感染した場合、膣から子宮頚管へ、子宮頚管から子宮内膜へと感染が上行していきます。子宮内膜に感染すると生理の時には、生理の血液が卵管から腹腔内に流れ込みますので、クラミジアも腹腔内に広がり、卵管や卵管周囲にクラミジアによる炎症を起こします。その結果、卵管閉塞や卵管周囲の癒着を起こし不妊症となったり、子宮外妊娠を起こしたりするのです。クラミジア感染が腹腔内に広がると肝臓周囲に炎症を起こし、Fitz-Hugh-Cirtis症候群という状態になります。

 妊娠初期に子宮や胎児が感染すると、炎症によって子宮が収縮し流産の原因となったり、胎児が子宮の中でクラミジア肺炎となり死亡したという報告もあります。

クラミジアの感染経路

 クラミジアの粒子(感染小体=1/10,000mmサイズ)は、細菌(1/1,000mmサイズ)とウイルス(1/100,000mm)の中間の大きさです。ほとんどが性行為で感染し、女性の膣や尿道・男性の性器や尿道に付着し感染します。最近は、性器だけではなく口腔内や腸の感染も増加してい
るとの報告もあります。また時には公衆浴場や自宅のお風呂で感染する例もあり、3才の女児が公衆浴場で感染したとしか考えられないとする報告もあるようです。

 以前は風俗業界でのクラミジア感染が一般的でしたが、最近は一般の男女の間に広がっているため、更に注意が必要と警告しています。

 妊婦がクラミジアに感染していると分娩時の産道で新生児がクラミジアに感染(母子感染)し、新生児クラミジア結膜炎や新生児クラミジア肺炎となります。

子宮頸がんの原因:ヒトパピローマウイルス(HPV)

 20才台〜30才台の女性に最も多い「がん」が子宮がん(=子宮頚がん)です。最近若い女性の子宮がんの増加が問題となっています。
 1980年代に子宮がんの原因の一部がこのウイルスによるものと判明し、以後研究が進むと子宮がんの約95%がこのウィルスが原因によって発病することが判ってきました。このウイルスは「HPV:ヒトパピローマ・ウイルス」と呼ばれています。現在約100種類以上のHPVの存在が知られていますが、特に10数種類のHPV(16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59・68・73・82・(23・53・66)が発がん性が高いと報告されています。
  HPV(ヒトパピローマ・ウイルス)の多くは皮膚に「イボ」をつくるウィルスです。多くの種類のHPVウィルスは感染してもほとんど心配はありませんが、性行為によって上記の10数種の型のウィルスのいずれかが感染すると数年後〜数10年後に子宮がんが発病します。
 また最近では、口腔がん・舌がん・喉頭がんの原因も同じウィルスとわかり"oral sex-related cancer" と考えられる、とも報告されています。子宮頚がんは、20才台〜30才台の女性に最も多い「がん」であり、初交年齢の低化による若年者の子宮がんの増加が問題となっています。またこのウイルスは、肛門(こうもん)がんの80%、陰茎がんの50%の原因ともされています。


若い女性の感染率が上昇

 最近では若い女性のHPV(ヒトパピローマ・ウイルス)の陽性率が上昇していると報告されています。当然ですが、性交相手の人数が多いほど感染率が高くなります。過去一年間に5人以上の男性と性行為を経験した女性は、半数以上がHPVに感染しているという報告もあります。  
 
 近年では性交開始年齢が低年齢化しています。ある統計では高校3年生の女子の性交経験率が1990年には20%程度であったのが、2001年では40〜50%に増加しています。これは男子でも同じ傾向が見られ、HPV感染の危険性が若年層で増していることを示唆しています。

HPVの検査法 と治療法

 米国ではすでにHPV感染の有無を調べるHPV-DNA測定キットが開発され臨床で使用されていますが、まだわが国では利用できません。希望すれば自費で検査が出来ます(約23,000円)。HPVに感染すると初期症状は感染による軽い炎症ですが、その後ウィルスが子宮頚部の扁平上皮細胞のDNAに取り込まれると、細胞に異型が生じてきます。その後、数年〜数10年後に子宮がんが発病するという研究報告があります。子宮がん検診(スメアテスト、Pup-test)はこの扁平上皮の異型を調べるのに最も優れた方法です。

 HPVウィルスには有効な治療法(内服薬)はありませんが、子宮頚部に生じた異型(=異形成)は早い段階(子宮がんに発病する以前の段階)で、LEEP切除、レーザーや凍結治療によって治療することができます。

 以前のわが国の方針では、30才を過ぎた女性のみを子宮がん検診を制度化していましたが、平成17年度からは20才以上の若年者も子宮がん検診の対象となりました。

また、平成21年12月から、HPVのワクチンが可能となりました。
                        (さのウィメンズクリニック)

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