福岡市中央区のウィメンズクリニック

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生理痛(=月経困難症)について

生理痛(=月経困難症)について

当院での生理痛(月経困難症)の治療方針」

  1. 妊娠の可能性の少ない18才未満の月経困難症の方には「黄体ホルモン単独療法」を行なってみる。周期的または連続療法で十分なケースが多いようです。副作用が少ない事も有利でしょう。(状況によっては避妊の指導が必要な事がある)。「生理不順の方」や、試験等で「月経移動が必要な方」には「LEP製剤(低容量エストロゲン・プロゲステロン配合剤)」を薦めるのが良いと思います。
  2. 30才以上の月経困難症患者さんには排卵を抑制しない黄体ホルモンの服用を勧めてみる(晩婚化の予防)。年齢とともに「AMH」が低下する事を説明しておく事も必要です。
  3. 避妊が必要な月経困難症患者さんでは月経困難症治療薬(LEP)や経口避妊薬の服用を勧める。
  4. 当院では「40才を過ぎて子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫がある患者さん」には「LEP製剤」による血栓症(エコノミー症候群)を回避するため「プロゲスチン療法」に切り替えを勧めています。最近の講習会では「LEP製剤は50才までは安全」との声を聞きますが、高いお薬代を払い続けせるだけのように思われます。「プロゲスチン療法」の方が「LEP製剤」よりは安全で安価だと考えています。
  5. 経産婦で避妊を希望する月経困難症患者さんには「ミレーナ」を薦めるようにしています(5年間で薬価約3万円。保険使用可;自己負担約1万円)。「費用対効果」が最も優れています。ミレーナが安定すれば、通院も年に1回程度で済みます。当院の記録ではミレーナを入れた方の約半数がその後は受診しなくなります。何も問題がなくて、忙しいか/受診を忘れているのでしょう。

生理痛(月経困難症)の原因と治療法の説明
 「生理痛は自然なものだから我慢しなさい!」との意見には反対です。生理痛(月経痛)の強い女性には「子宮内膜症」が8倍も多く発症します。初潮が始まると同時に結婚し妊娠していた昔は、内膜症は稀な病気でした。晩婚の現代では150人に1人が内膜症のため通院しているという報告があります。
子宮の内膜は、黄体ホルモン(と共に卵胞ホルモン)が急激に減少することによって剥離します。その時の子宮内膜の断片と血液が混じったものが子宮から出て来るのが生理(月経)です。生理の血液には子宮内膜が剥離するときに産生された「痛み物質(プロスタグランディンPGs)」が含まれています。この痛み物質を多く吸収すると子宮や大腸の筋肉(平滑筋)が強く収縮し生理痛や下痢が起きます。プロスタグランディンの一部は血管を拡張する作用もあり、多くの人では頭の血管が拡張します。その結果血液が多く流れることになり、脳圧が上がって、頭痛や吐気を起こします。

   
未婚婦人は子宮頚管(子宮の出口)が狭く月経血が流れ出にくいため、月経血の一部は卵管から腹腔内に流れていきます。その結果、痛み物質が腹膜から吸収されて、子宮や大腸の筋肉が強く収縮し生理痛や下痢が起きやすくなると言われています。出産後に生理痛がなくなるのは、出産によって子宮の出口が広がり月経血の中の痛み物質が体外に出やすくなり吸収が減るためです。子宮内膜症がなくて生理痛が強い方のほとんどが、このような理由で生理痛が起こっているのです。そのために生理痛を減らすには、(1)プロスタグランディン(PGs)の産生を抑える:鎮痛剤の内服、(2)子宮内膜を薄くする:LEP(低容量エストロゲン・プロゲステロン配合剤)・黄体ホルモン剤(プロゲスチン療法)・経口避妊薬(ピル)の内服・ミレーナの挿入、等が有効です。下記に「治療の原則」を記載しています。

「生理痛=月経困難症」の治療の原則。

  • 「生理痛を減らす」には、プロスタグランディン(PGs)を下げる。
  • 「プロスタグランディン(PGs)を下げる」には、
  • 内膜を薄くする(LEPやプロゲスチンを服用する。ミレーナを入れる。)
  • 生理を止める=内膜が剥がれないようにする。
  • 妊娠する=妊娠・授乳で約1年半〜2年間ぐらい生理が無くなる。
  • LEPや黄体ホルモンを連続で服用する。
  • GnRHで卵巣の働きを止めて、更年期状態(偽閉経療法とも呼ばれる)にする。

 子宮内膜症があると、子宮や卵巣や骨盤の子宮内膜症の病変部位で痛み物質が放出されますので、出産によっても生理痛は軽くなりません。出産後(帝王切開を除く)は一時的に生理痛が減少しますが、1〜2年後ごろに再び強くなる方は婦人科で診察を受けてみて下さい。膣からの超音波検査では子宮や左右の卵巣の微細な状態まで診断ができます。内膜症があれば「早く次の妊娠を」と勧めます。内膜症の治療中は妊娠しないので、治療を先にするか/治療なしで妊娠を勧めるかは、内膜症の程度や年令などから判断します。
LEP(低容量エストロゲン・プロゲステロン配合剤)や経口避妊薬(ピル)は「避妊目的」以外にも様々な症状に有効で、「月経不順が良くなる」・「月経痛が軽くなる」、「子宮内膜症が悪化しにくい」、「服薬中止後も6ヶ月ぐらい鎮痛効果が続く」・「月経不順の方では排卵しやすくなり妊娠が期待できる」・などの利点があります。

「器質性月経困難症」とは:
生理痛には「原因のない月経困難症(原発性月経困難症)」と原因がある月経困難症(続発性月経困難症)があります。原因がある月経困難症を「器質性月経困難症」と命名し、原因として、1. 子宮内膜症 2. 子宮腺筋症 3. 子宮筋腫、等が挙げられています
「器質性月経困難症」に対しては、上記のLEP(低容量エストロゲン・プロゲステロン配合材)・黄体ホルモン剤(プロゲスチン療法)の他に「GnRH製剤」や「ミレーナ」があります。

下記の図表は作成中です。

  • 当院で通常に使用する「月経困難症治療薬」の一覧
  • 当院での月経困難症治療薬(プロゲスチンとLEPの使用状況)
  • 当院での月経困難症治療薬(GnRH製剤)の使用状況
  • プロゲステロン製剤の種類と薬価(3ヶ月分)を一覧にしました。
    LEPの種類と薬価(3ヶ月分の費用)を一覧にしました。
    GnRH製剤の種類と薬価(3ヶ月分)を一覧にしました。
  • 「プロゲスチン製剤」の種類・薬価・保険適応、等の一覧。

(10)  プロゲスチン薬の副作用と対症方
副作用:基本的にはLEPと同じです。ジエノゲストで特に少ない事はないと思われます。

  •  嘔気・嘔吐:5%前後。
  •  むくみ。体重増加:10%前後。
  •  頭痛:1〜2%ぐらい。
  •  お薬の量が適正だと「生理がなくなります」。お薬の量が少ないと不正性器出血または定期的な月経があります。少量のデュファストンでは普通に排卵があり妊娠します。
  •  血栓症:増加するという報告はありません。ほぼ、通常人と同程度です。
  •  ジエノゲストでは更年期障害・骨粗鬆症の報告があります。

対症法:

  1. 嘔吐・頭痛がお薬を飲む度に起これば一日で中止します。
  2. むくみ・体重増加は、1〜3ヶ月の経過観察の結果で中止します。食事療法で改善する方も多いようです。
  3. 不正性器出血は2〜3日以内の少量では継続。長引けばノアルテンで止血し、再開か錠剤を増やして継続します。

(11)  LEP(低容量エストロゲン・プロゲステロン配合剤)の効果と副作用
改善する点:
1. 視床下部の抑制が強くなり、排卵が無くなる (避妊効果がある)
2. 月経周期が調節できる(月経移動=14日に早めたり、35日に遅らせたりできる。通常は28日周期で固定する)。
3. 黄体ホルモン単独よりも、不正出血の頻度が低下する。

不利益になる点:
1. 副作用が強くなる(たとえば悪心・嘔吐)。
2. 血栓症のリスクが高くなる(1〜5人/1万人➜5〜10人/1万人)。3〜4倍。
4. 薬価が高くなる(黄体ホルモン単独:全額保険。約700円〜1,000円月経困難症治療薬:全額保険、1,070円[後発品]・1,700円・+処方代)。

(12)  GnRH製剤の使用状況と副作用
下記に現在発売されているGnRH製剤一覧を掲示しました(作成中)。薬品代が比較的に高いのと長期間の使用が認められていないため(連続6ヶ月より長期の使用は原則不可)、処方しづらく、また「更年期症状」や「骨粗鬆症」の原因となるため、クリニックでは使用しづらい薬品です。通常は手術療法の直前に使用します。

(13)  手術療法
 月経困難症のみで手術をすることはありません。手術が必要な方は、

  • 卵巣に大きな「チョコレート嚢腫」(5〜6cm以上)があり、放置すると月経時や性交時に破裂する可能性がある時、破裂すれば激しい腹痛があり救急車で搬送となり「緊急手術」が必要です。
  • 40歳を過ぎて卵巣に5〜6cmの「子宮内膜症性嚢胞=チョコレート嚢腫」がある時:「卵巣がん」になる可能性が1%前後あると報告されています。
  • 大きな「子宮筋腫」があり、妊娠の支障があると判断される時。
  • 大きな「子宮腺筋症」があり妊娠希望の時。「子宮腺筋症縮小術」が行われますが、うまく行ったという報告はあまりありません。

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