子宮筋腫について
- 婦人科の腫瘍で最も多いのが子宮筋腫です。女性が10人いるとその内の2~3人が子宮筋腫を持っているそうですが、実際に手術を受ける女性は年間1000人に1人程度、一生涯では100人に1人程度だそうです。かりに100人中30人の女性が筋腫を持っているとすると、その内から手術を受ける女性は1人で、29人は筋腫があっても手術は受けなくて済むことになります
- 手術が必要になる女性と手術が必要とならない女性の違いは、閉経(50才前後で月経がなくなること)までに症状(月経量が多くなって貧血になる/筋腫が大きくなり過ぎる/など)が出現するかどうかで決まることが多く、症状が出る/出ないの違いは筋腫が子宮の何処にできたか/いくつできたか/などから来ます。
- 手術の方法は将来の妊娠の希望があるか/ないかによって二通りに分かれ、筋腫だけを切除し正常な子宮を残す「子宮筋腫核出術」と子宮を全て摘出する「子宮全摘術」があります。
- 「子宮筋腫核出術」には「腹式(開腹手術)」・「膣式(子宮鏡下手術=傷が残らない)」・「腹腔鏡下手術」があり、子宮内腔にできた「粘膜下筋腫(子宮の中に突出して発生した筋腫)」には「膣式(=子宮鏡下手術)」を行うことが出来ます。
- 「子宮全摘術」にも「腹式(開腹手術)」・「腹腔鏡下手術」・「膣式手術(膣の方から手術する)」があります。子宮筋腫の手術方法の多くが患者さんに最適の方法で選ばれていると思いますが、どの方法で行うかは、筋腫の位置や数や大きさなどの他に病院の設備などによって決められる部分もあります。そのため手術を受ける前に手術の方法や合併症などの説明を良く聞いて納得しておく事が必要です。
- 閉経を間近の50才前後の婦人に子宮筋腫の症状が出た場合は、希望すれば点鼻薬や注射で月経を止め(偽閉経療法と言います)、そのまま閉経するのを期待する方法もあります。そのまま閉経すれば手術が回避できますが、成功率は30~40%ぐらいとの報告が多いようです。ただし「粘膜下筋腫(子宮の内膜にとび出た筋腫」の場合は偽閉経療法の直後や閉経の直前に大出血することが稀にあり、注意が必要です。
- 当院では極く稀に「点鼻薬のスプレー」を数年間使用して、手術を回避された方がいます。そのような方は点鼻薬の治療中に「骨塩量の測定」を必ず行い、また「子宮体がんや子宮内膜増殖症の発生がないか」を定期的にチェックします。更年期障害に対する対応も行います。
- 偽閉経療法は手術を回避する方法ですが、逆に、閉経直前に子宮筋腫による軽い症状が出た場合に「閉経後のホルモン補充療法」のメリットを考えて、積極的に子宮全摘術を行う考え方もあります。ホルモン補充療法は閉経女性の健康維持に最も有効な方法ですが、不正性器出血が続いたり同時に服用する黄体ホルモンによる乳癌発生の危険性が少し高まるなどの難点があります。しかし手術をしておけば黄体ホルモンを服用せずにすむため乳がんの発生率を高める事を防げる可能性があります。
- 子宮にも悪性腫瘍(肉腫)ができることがありますが、極めて稀です。発生頻度は200~300例の子宮筋腫の手術例に1例ぐらいとされています。手術前に予測することはほとんど困難です。ただし急速に大きくなったり/筋肉由来の酵素の上昇などがある場合は肉腫を疑って手術することもあります。ただし手術前の検査でそのような疑いが強い時は、婦人科の悪性腫瘍専門病院を紹介するのが普通です。